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語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

厚労省が出しているパンフレットに補足と注意とダメ出しをしてみた

労働、ブラック企業

 厚生労働省が、就職を控えた学生などが働き始める前やアルバイトをするときに、最低限知っておいてほしいルールをまとめたハンドブック「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」を作成したとのことなので、内容を見てみました。

 

www.mhlw.go.jp

 

 労働法を知っていたところで、実際にどれだけ役立つかはかなり怪しいですし、こういうパンフレットを出すことに意義があるのにしても、果たして費用対効果が良いといえるのかという問題はありますが、とりあえず、内容について補足と実際に労働者が注意すべき点とダメ出しをしてみることにします。

 なお、私の労働法の知識・理解は、昨年度の司法試験で約50点(平均よりやや上)、昨年度の労働基準監督官A試験の一次試験に合格している程度なので、信用しすぎてはいけません。

 

 

p2 はじめに

 「何かあったら相談しよう」とは言っていますが、そこそこ重大な案件にならないと労働基準監督署は動かないので、あまり期待はしない方がよいでしょう。

 訴訟まで行くとなったら弁護士に頼まないといけないですし、重大な案件じゃないと手間と相談・訴訟費用のコストの方が大きくなるため、泣き寝入りするしかないことは多々あります。泣かされるおそれの少ない会社を選ぶことこそが非常に重要です。

 コミュニケーションを取るのが大事なのは確かにそうなのですが、こちらがしっかりコミュニケーションを取ろうと思っても、パワハラ上司がそれに応じるとは限りません。それに、現実には、問題を訴えたことを契機にハラスメントが行われることもあるので、コミュニケーションを取るか否かの判断は慎重に行わないといけません。

 とにかくコミュニケーションを取りましょうという厚労省のアドバイスを素直に受け入れたらあなたの会社人生は大変なことになりかねないので、注意して行動しましょう。

 

 

p4 求人内容

 実際に面接したら求人内容と違うなんてことは多々あります。

 それに面接で行っていた内容と労働条件通知書の内容が違うこともあります(私もこれをやられました。給料減りました。なお、事前の面接と違うと分かっていても、使用者の力関係の方が圧倒的に強いため、変更できなかった模様)。

 厚労省は、「広告では良い条件の求人内容を上げておきながら、実際にはそれより低い条件を提示するという使用者のやりたい放題状態である」ことをはっきりと明示して、注意喚起をより徹底すべきでしょう。

 また、求人広告では性別の条件を付けることは原則禁止されますが、現実には男しか雇わない、女しか雇わないは当然ありますし、それについて労働局や労働基準監督署が無理やり平等に雇用させるように是正することはまずできません。ここも使用者のやりたい放題がまかり通っています。労働基準監督署自体が職員全体の男女比の是正のために、近年は女性ばかり採用していますから。

 ハローワーク等で実際にどういう人が採用されたかをちゃんと聞いて、本当に男or女を雇う気があるのかを吟味してから、面接の予約をしないとただの時間と労力と資料代の無駄になります。

 厚労省はこういう現実をちゃんと学生に教えるべきではないでしょうか。ネットや2chで適切に情報を仕入れられる学生ばかりじゃないんですよ。

 

 

p6 労働契約

 できれば就業規則は確認したほうがいいですし、労働条件をしっかり確認したほうがいいのは一般論としては正しいです。

 しかし、あまり詳しく追及すると「こいつはやたら権利主張してくる奴だ」と思われて、試用期間が終わった後本採用されなかったり、退職させようと嫌がらせを受けたりするおそれがあります。

 なので、労働条件の確認というのも慎重に行うべきです。建前上は使用者と労働者は対等ですが、現実の力関係は使用者が圧倒的に上なので、労働者はその辺を考慮して行動しないと危険です。日本の労働環境は残念ながらおかしいので、おかしいことを前提に慎重に動きましょう。

 

 

p9 コラム

 ハローワークの求人の中には、当然のようにブラック企業の求人も多々あるので(ハローワークが適切に会社情報を入手していると思いこんではいけない)、しっかり職員の方からその会社の情報を得るようにしましょう。

 どういう人が採用されたか、年中求人を出しているなど空求人を疑うような事情があるかといった貴重な情報は職員の方に聞いてみないと分かりません。ただ、残念ながら職員の中にはまるで使えない人・失礼な態度をとる人もいるので、行くハローワークの場所を変えたり何度も足を運ぶことも重要です。

 あと、現状では労働組合の結成率は2割ないとかですし、組合はあってもまるで期待できないことも少なくないです。できるだけ労働組合のある企業に行くべきとはいえますが、労働組合に過度の期待を持つことはできません。自己防衛を心がけましょう。

 

 

p13 労働条件の変更

 実際には、辞める覚悟がないと変更に異議を唱えるのは難しいです。力関係は圧倒的に使用者が上ですから。

 なので、勝手に給料を減らしたりしないだろう会社を選ぶことこそが重要です。会社選びという最初の段階こそが最も大事なのです。

 

 

p15 賃金・労働時間

 使用者は、割増賃金を支払わなかったり、サービス残業をさせたりするものなので、いざというときのためにタイムカードなど働いたことを証明できる資料を撮影するなどして、証拠を残しておきましょう(なお、私は証拠を残してはいたものの、未払い額が少なかったので泣き寝入りするしかなかった模様。)。

 これらの証拠は過労鬱や過労死などがあったとき、労働災害があったときに役立ちます。

 

 

p17 休暇、休日

 法律と現実の運用は全く違っています。実際には、自由に有休をとれる会社ばかりではありません。法律は無視されているのです。

 とにかく、有休をちゃんととれる会社を選びましょう。それにつきます。

 

 

p19 両立支援、均等取扱い

 解雇や降格といった明らかに不利益取り扱いとなる処分をすれば訴訟沙汰になりかねないため、使用者側もそういう手段はそう簡単には取りません。

 実際には、退職させようとしたり、降格等の同意を得ようとしたりして、度を超した働きかけや嫌がらせが行われることで、解雇等の目的を達成しようとするものなのです。

 どういう嫌がらせ、言動があったのかメールなどの証拠は確実に残しましょう。

 

 

p23 就業形態による違い

 とにかく、正社員を売りにして労働者をこき使おうとする悪徳な使用者が多いので、その点気をつけましょう。

 本当に正社員登用があるのか、正社員への転換ができるのか過去のデータをよく見て会社を選びましょう。

 

 

p26 解雇

 退職理由が、会社側にあるのか労働者側にあるのかで失業自己給付の支給に影響が出る場合があります。

 勝手に自己都合退職にされないよう十分に気を付けましょう。どうせ会社を辞めるので、もう会社に対して配慮なんていりませんよ。

 詳しいことは、とにかくネット等で情報を集めてください。

 

 

p28 退職

 退職の意思が断固な場合は、退職願ではなく退職届をだしましょう。

 会社の用意する退職届もあるかもしれませんが、自分で作成するのが無難です。私の場合、会社側が「給料債権を放棄する」という誰が見ても公序良俗民法90条)に反する内容の退職届をよこしてきましたからね。使用者は法律のことなんて知りませんから、法律のことを知っている人が書いたサイトを元に退職手続きに移行しましょう。

 

 

全体を見て

 おかしなことがあっても、裁判になればまず労働者側が勝つでしょうが、裁判の手間・コストを考えると裁判になる前に問題を生じさせないよう自己防衛をしましょう。悪徳な使用者は、どうせ訴訟を起こさないだろうと思って平気で違法行為をやってきますからね。

 

 

 ネットでは叩かれているかもしれませんが、全体的にわかりやすくて良いパンフレットだと感じました。労働法をまるで勉強していない人でも十分必要な事柄を理解できるようになっていますしね。

 ただ、残念ながら、法律と現実の運用には大きなかい離がありますし、悪徳な使用者はどうせ訴えられないと思って違法行為をしてくるものです。法律の存在を知るだけではどうしようもないことが非常に多いです。

 そのため、現実をよく知り、まともな企業に入るよう努め、いざというときのために裁判で勝てる証拠を確保しておきましょう。パンフレットには書いていませんが、法律をよく知ることよりもこれらのことの方が大事です。